ラレトラ

可賀レトラの日記と小説置き場
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『この腕いっぱいの幸福(しあわせ)を』 1

 トイレのドアを開けた瞬間、心の中で目をつむって「すみません間違えました!」と唱えそうになった。たとえば、試着中の人がいるのにうっかりカーテンを引いてしまったときとか、カラオケでよそ見しながらがちゃりとやったらカップルで仲睦まじくやっている隣の部屋だったときとかと同じように。
 仲良く並んだ新郎新婦に「今日は来てくれてありがとう」なんて見送りの挨拶を受けたら死にたくなってしまうと、トイレに行くふりをして早々に抜け出してきたバチでも当たったかと思った。……いや実際、せめて有言実行とここまで来たから、こんなことになってしまっているのだけれど。
 洗面台の前で、その人ははらはらと泣いていた。複雑な花模様で装飾されたライトに照らされて、涙が紅の差した頬にきれいな筋を描いていた。
 そもそも男性用のトイレにここまで華美なインテリアなんて必要なのか? と樹(たつる)は思う。先日、ショッピングモールのワンフロアまるまるのデザインが大学の課題で出されたときには、何も考えずに男女対称の設計にしたけれど、あれはシンプルだから別にそれで問題ないのであって、男子便所がこんなエレガントでエクセレントなつくりだったとして一体誰が喜ぶのか……まあ下手に違いがあっても、どこかしらから文句が出て面倒なことになるんだろうな。といっても、その相違点を発見できる人なんて、掃除のおばちゃん以外には思いつかない。
 と、そんなどうでも良いことを考えてしまうくらい、その人の涙に動揺してしまった。
 だってこの人は、樹がたった今抜け出してきた、兄と従姉の結婚式に出席していた人だ。友人席に、たしかに座っていた。樹と同じように、少し早めに抜けてきたのだ。
 ……おそらくは、こうして泣くために。
 樹は、人が泣く姿をあまり見たことがない。だから思い出したのは、だいぶ古い記憶だった。中学校時代の、校舎うら。樹が「ごめん、付き合えない」というと、その女の子はしゃくりあげもせずにスウっと涙をこぼしたのだった。びっくりした。
 だから、この人も、そういうことなんだろうか。つまり……相手は従姉、ということなのか。
 あれこれ考えた結果、樹は気づかなかったことにしよう、ときびすを返すことにした。しかし一瞬間に合わなかった。
 その瞳と、鏡越しに、目が合ってしまった。おまけに声をかけられた。
「失礼しました……あの、ご親族の方ですよね」
「……え? あ、はい」
 話しかけられると思わなかった。というか、百人以上が出席したあの会場の中で、自分が認識されていたなんて思わなかった。返事が一瞬遅れる。
「すみません、ちょっと、取り乱してしまっていて」
 声はしっとりと水気を帯びている。鏡面上で、目と目が合い続けている。
「あ、いや、どうぞどうぞ」
 その眦はおそろしいほど美しかった。樹は、自分が馬鹿みたいな返答をしている、と思いながら、思わず言葉を足した。
「よかったら使いますか?」
 出がけに母親から「白いハンカチ一枚持たないでどうするの!」と押し付けられたそれが、こんなタイミングで役に立つと誰が予想しただろうか。
「ありがとうございます」
 素直に受け取られ、目元に押し当てられる。丁寧に整えられた長めの髪は、並んで鏡に映ると樹より少しだけ低いところにあった。
 その身長差を見つめながら、少しだけ時が流れた。
「ごめんなさい、汚してしまいましたね……洗って返しますね」
「いや、気にしないで。気になるんだったら、美羽子(みわこ)さんに預けてくれても……と言おうと思ったけどやっぱ、却下で。……ごめんなさい、俺無神経すぎるな」
「いえ」
 その短い返答は、先ほどまでよりさらに音量が絞られた、切実な響きだった。それで、確信した。
「あの、やっぱり貴方が泣いてるのは、美羽子……美羽姉のこと」
「そんな、感じですね」
 真っ白なハンカチで表情の大事な部分を覆い隠すようにしながら、その人は静かに微笑んだ。
 樹は心が締め付けられる。
 たった今恋を失ったばかりのこの人に、何か言わずにいられなくなる。
「あの……この後、お時間ありますか」
「え?」
「ご予定、空いてませんか」
 その人はとことん戸惑った顔をした。しかし、答えてはくれた。
「本当は二次会にもお声がけいただいてますが、こんな顔ではとうてい出られませんので……」
「じゃあ、俺と一緒に飲みに行きませんか。断りの連絡が必要だったら俺が入れますから」
「でも……」
 何か続こうとした薄い唇を、すぐさま言葉でふさいだ。
「俺も、ちょっと今日、飲まなきゃやってられない気分なんです。だから、もし良かったらお付き合いいただけませんかっていうお誘いです」
「そう、ですか。そうおっしゃるなら……」
 小さく頷かれたのを了承と取った。年上の人を、こんな不躾に誘ったのなんて初めてだ。
 気が変わらないうちに、と樹はその人をせかしてトイレを出る。そして、列席者に見つかることのないよう、辺りに気を配りながら、裏玄関から式場を後にした。


 いくら気が進まなくても、兄が結婚式を挙げるとなれば弟が出席しないわけにいかないのが世の習わしだ。それが、表向き仲のよい兄弟であれば、なおのこと。
「昔はほんとに仲が良かったんですけど。いつからだろう、どうしても馬が合わなくなって」
「そういうことは、あるかもしれませんね」
 彼は遠慮深く同意する。目には少し、腫れぼったさが残っていた。
「少し年が離れてるからかな、あ、俺まだ大学生なんですけど。小さい頃は兄弟げんかとかした記憶も全然なくて。だから、今さら何やってんだろって変な気持ちになったりもしますけどね」
 兄の周(あまね)は婚約を機に実家を出ていた。だから最近は顔を合わせることもなく、少々ほっとしていたのだ。
 ほっとしたついでに兄がいない理由をすっかり忘れていたため、母に「来月あっちゃんの結婚式よ。ちゃんと覚えてるわね?」と念を押されたときには、ずんと気分が重くなるのを感じた。
 というくらいなので、本当は兄について言いたいことは色々あったのだが、祝福の席のあとにはあまりふさわしくないだろうと自重しながら話す。
「美羽姉、あ、俺にとってもいとこですけど、家が近くて昔からよく遊んでるからそう呼んでます。美羽姉もなんか変わっちゃったなって感じでちょっと疎遠になって。けど、いくら俺と兄貴のそりが合わないからって、結婚式は出なきゃならないですよね。親からのプレッシャーとか、親戚の目とかもあるし。美羽姉以外の親戚は、いまだに仲良い兄弟だと思ってるみたいだし。でも、結婚式って最後に二人のお見送りみたいなのあるじゃないですか。手土産とか渡されて。どうしてもそこで『おめでとう』って言う気にはなれなくて、一瞬先に抜け出しちゃったんです」
 そうしたらあなたに見つかってしまったんですけど、と続けると、その人は控えめに笑った。
 席次表は見ていたが、もちろん名前までは覚えていなかった。「由井(ゆい)です」と名乗られたので、樹も西條(さいじょう)です、と言ってから慌てて「樹です」と付け足した。名字だけでは兄と区別がつかない。
 二次会に出るはずだったという彼に会場の場所を聞き、近辺のエリアは避けた。当てをつけてタクシーで移動し、普段なら絶対選ばない単価の高そうな洒落た居酒屋に決めた。
 樹はまだ大学生だから煙草臭いごみごみした店の方に馴染みがあるが、彼にそんな場所は似つかわしくないと思ったのだ。上等なものだろうな、と想像させる柔らかな光沢のあるスーツに、シンプルなデザインが地味ではなく洗練されて感じる革靴。その他の小物も総じて質が高そうだ。
 タクシー代はさらりと彼が払ってくれたので、飲みの精算のときになんとかしよう、と心に留め置く。
「で、もし嫌じゃなければ。貴方は何があったんですか?……お話聞いても、もちろんこの席限りにしますから」
 気持ちよく酒も回ってきた。相手の横顔も同じように見えて感じた。
 何も話してくれないかもな、とは思っていたが、意外にも彼の口は開かれた。
「そうですね……。一目惚れ、だったんです」
 薄い唇が思い出を紡ぎ始める。

 彼が友人席に座っていた一人だったことには、涙に濡れた頬を見たときから気づいていた。
 気の乗らない席で、幸せそうな二人を視界に入れ続けるほど苦痛なことはない。なにか他にできることはないかと考え、席次表は既に穴のあくほど見つめてしまったので、招待された客を一人一人眺めていた。
 彼は、何人目かではたと目にとまった。
 おめでたい席だから、その場にいる人はみな華やかに、あるいはきっちりと着飾っている。しかし彼だけは、衣装のきらめきではなく、内側から光を放っているように感じた。
 その時も、おそろしく美しい横顔だった。花嫁の衣装に合わせた青と白の花々が、まるで彼にあつらえたかのように似合って見えた。
 あるいは、そうまで印象に残ったのは、彼の表情のせいだったのかもしれない。自分が「同じ」だから気づいた、としたら、それは樹にしか見えなかったことになる。
 ……その場にいた百人もの出席者の中で、樹が目にした限り、「祝福以外の何か」をあそこまで色濃く宿した瞳は、自分と彼のものだけだった。
「大学のクラスが一緒でした。その前の入学式のときに、すぐ目の前に座っていたんです」
 彼はたどるようにぽつりぽつりと話す。
「入学式の座席なんて学部ごとにブロック分けされているだけで、僕たちの学部なんて数百人もいた。教室に入って姿が目に留まったとき、偶然すぎて嘘じゃないか、と思いました」
 カウンター席のある店だった。テーブルがもう埋まっているとのことで、二人はそちらに通されていた。
 横に並んで座っている。頬杖をついた口元が動くのを、樹は斜め後ろから盗み見るように眺める。
「後ろ姿をあんまり僕が見つめすぎてたんでしょうね。振り返って、目があったら、初めましてと笑いかけてくれました。それがきっかけで仲良くなった。誘われて、同じサークルに入りました」
 兄の周と義姉の美羽子は、揃って同じ大学の同じ旅行サークルに入っていたのだ。高校も同じところに通っていたし、そんなに一緒にいないと気が済まないのかとごちたくなったほどである。今日友人として参列していた人はほぼ二人のサークル仲間だと、母が誰かと話しているのを聞いた。
「まあ、でも、それだけなんです。二人の仲がよいのは、最初から周知のことでしたから」
「え、だけどそれから十年近く」
 周は今年で二十七だから、美羽子ももう二十六になるはずだ。大学入学が十七か八と考えれば、十年には少し足りないが、そこそこの年月が経っている。
「もう、そんなに経つんですよね……いい加減、未練がましすぎますね」
 単純にすごい、と樹は思った。失うことがわかっていて十年恋を続けたあげくに見届けるなど、自分のこれまでを思い返してみても、全くできる気がしなかったからだ。
「……まだ、好きなんですか」
 彼はグラスをからからと鳴らす。袖口から華奢な時計が覗いていた。
「どうでしょう。好きだと気づいたときには、もう失恋していましたから……」
「告白、したんですか?」
「いや、当時はまさか。……そもそもが、恋愛に対しては嫌な思い出しかないんです。気持ちを伝えるなんて思いもよらなかった」
 彼は目をふせた。嫌な、と言ったときにふっと表情が消えてなくなり、だから樹は、それがどんな思い出なのか聞くことができなかった。
 その人は話し続ける。
「ずっと仲良くしているいとこがいて、いい感じなのになかなかそれ以上に進めないんだってことも、すぐにサークル中に知れ渡ってましたし……。思えば、皆と一緒に橋渡しみたいなこともしていましたね。そのまま、ぼうっとしたまま、今日まできてしまったような感じで……」
 彼を見たときに感じた、おそろしさ。それはこんなところにあったのではないかと樹は思った。
 綺麗だけれど、いわゆる「モテる」感じではなく、女性の気配がないというか、むしろ女性以上に美しいと言おうか。ぼうっと十年通り過ぎてしまうような恋。そんなものを抱えていれば、それは、外側まで洗練される。
 その相手が小さい頃から遊んできた自分の従姉だと思うと、少しばかり不思議な気持ちも抱いたが。
 考え込んだ樹の沈黙を、彼は違う風にとらえたようだった。
「ごめんなさい、引いてますよね」
「いや、びっくりは、してますけど。その間ほかにすてきな人いなかったのかなあとか」
「いたのかもしれないけど、わからないですね。別に毎日つらかったばかりじゃなく、楽しいこともたくさんありましたから」
 彼は笑う。
「同じ講義を受けたり、大学が終わってから買い物に行ったり。仲間みんなでですけど、一緒に旅行にも行きました。卒業してからも何回か」
「ああ、それは兄もよく言ってた気がします。サークルのみんなでどこそこへ行く、って」
「そうですか」
 彼は懐かしそうに目を細めた。
「旅行はもともと興味はありませんでしたが、サークルに入ってしまったこともあって、しだいに一人でも行くようになりました。いろんな国の、それぞれ違ったファッションを見るのが楽しくて」
「服、ですか?」
 料理めあての旅行ならよくある。樹の場合は建物だ。しかし、服というのはあまり聞かないなと思って聞き返す。
「そうです。服とか小物とか、そういったものが好きで。仕事もそういうことをしてます。裏方のつもりで就職したら、店舗に配属されてしまって、それはちょっと想定外だったんですけど」
「あ、だから由井さん、お洒落なんだ」
 言われてみれば、しつらえたような服装の全てに納得がいく。
「いや、そんなことは……。もうちょっと派手なものを着れば、なんてよく言われますし」
「え、そんなことないですよ。すごいかっけーな、って俺思ってましたもん」
「ありがとうございます」
 語彙力無さ過ぎたか、と思ったが、彼は笑ってくれた。
「……就職してからは、店にもよく来てくれてたんです」
 誰が? と言いかけて、すぐに美羽子のことか、と気づく。
「仕事の帰りなんかに寄って、たまに買い物もしてくれて。少し話ができるだけで、一週間は幸せでした」
 そういう気持ちなら、樹にも分かる。とはいえ、ここのところはとんとそんな感情にもご無沙汰だった。
 最後に自分から誰かを好きになったのは中学生のころ。クラスの誰とも群れないで、地味ながら一人凛と立っているような女子だった。委員会が同じだったので、月に一度その用件で会話を交わすたびに心が浮き立った。
 ところが、ある日彼女とは別のクラスメイトから告白された。当然断ったのだが、なぜかその子の友人たちまで一緒になって詰め寄られた。
「どうして? マミかわいいんだし、別にオーケーしたっていいじゃん」
「ならオーケーしなくたって俺の勝手だろ」
「だって勇気出して告白したんだよ、理由もないのに断るとかひどいよ」
 ひどいのは五人も六人も寄ってたかって取り囲んでるそっちのほうじゃないのか、といい返す間もなく、売り言葉に買い言葉で応戦しているうちに、好きな子がいることを聞き出されてしまった。
 それが誰だかまでは口を割らずに済んだのだが、周りはやかましいし告白してきた当人はずっと涙を流しているしで金輪際恋愛なんてごめんだ、と思っているうちに中学は卒業してしまい、全てはうやむやになった。
 高校から先は、さすがにまた恋愛というものにも興味が沸いてきて、告白されて付き合ったことは何度かあったが、目に留めるだけで、話せただけで心がふわつくような「好き」には届かずじまいだった。その最後の彼女とも一年も前に振られる形で別れて、今日に至る。
 あまりいい思い出ではない気もするが、最初に告白を断ったときの涙だけは、やたらと色鮮やかな記憶として残っている。彼が泣いているのを見たときに、ぱっと脳裏に浮かびあがってしまったくらい。
 少しの沈黙に、彼が振り返った。
「何か、おかしかったですか」
「いえすいません、ちょっと昔のことなんかを、思い出してただけです」
 透き通るような瞳が、樹の目を見据えたまま止まった。……そういえば中学で好きだったあの子も、話しかけると「なに?」と真っ直ぐ目を見つめてくる人だった。
 笑顔もなく、すぐ逸らされなかったことにどぎまぎする。あの、と話しかけようとしたところで、絡んだ視線がふっとほどけた。
「実は、前からあなたのことを知っていました」
「え……何を?」
 ついていけずに聞き返す。
「か、いえ……親戚に男の子がいるんだ、お兄さんとは違う雰囲気で、なんとなく僕と似た名前の、って」
「名前。由井さんとですか?」
 樹の名前は、たつる、と読む。色んな読み方のある字だから間違えられることも多いが、自分としては気に入っている名前だった。
「そうです。僕の名前は千鶴(ちづる)というので」
 穴のあくほど見つめた席次表が頭の中によみがえった。
 全然気づかなかった。由井千鶴。漢字の並びが、脳裏に浮かび上がる。

 それからさらにぽつぽつと会話を交わし、いつの間にか、かなり長い時間が過ぎていた。真横に座っていたスーツ姿の男性から「やべ、そろそろ終電だ」と聞こえてきて、樹は腕時計に目をやった。
「あ、俺もそろそろ出ないと」
 店員を呼び止め、会計を頼む。千鶴は財布から、おもむろに札を取り出した。
「じゃあ、これで」
「え、多すぎますよ」
 伝票を最初に受け取ったのは樹のほうだった。千鶴はそれを一瞬見ると、会計より多い金額を手渡してきたのだ。
「さっきのタクシー代もありますし、せめてちょっとくらいは出させてください」
 札を一枚突き返すが、受け取ってくれない。相手が社会人で年上だから、ある程度は多く出してもらうのも有りかもしれないが、それにしても誘ったのは樹のほうであるし、そもそもこれでは大幅にお釣りが出るのだ。
「いいんです。先ほどのハンカチが返せませんので……すみませんが、新しいのを購入していただければ」
「そうはいっても、というか」
 式場での千鶴は「洗って返す」と言っていたはずである。
「そんな大層なものじゃないので結構です。それでも気になるなら、もし由井さんがお忙しいなら、俺がどこでも取りに行きますし」
 母に押しつけられたから、本当は大層なものだったとしても知る由はないが。
「いや、今日のことはこれっきりにしてください。少し喋りすぎてしまいました。もしお金が余るようなら、他人の与太話を聞くバイトでもしたんだなと思っていただいて」
「え、そんな言い方」
「今日限りで。失礼します」
 樹はむっとして言い返そうとしたが、千鶴は聞かずにするりと席を抜け出してしまった。
「あ、由井さん!」
 慌てて追いかけるが、時悪く二人の間に帰り際の団体客が割り込んできた。
「ちょっと、すみません」
 がやがやした店ではないから、あまり騒がしく追いかけるのも気が引ける。そんな若干の遠慮をしているうちに、千鶴の姿は見えなくなってしまった。
「なんだよ……」
 会計を済ませてから往生際悪く辺りを探し回ってはみたが、もちろんのこと、彼を見つけることはできなかった。



 

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