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可賀レトラの日記と小説置き場
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SS『旅のあとさき』(R18)
宣言通り今月も参加させていただきます。


【2014年12月お題SS】

主催幹事:
牛野若丸さん

お題発案者:
匿名希望さん

お題:
A、B、どちらかのお題でお書きください(フル使用もちろん可)

(A)「なく」「わらう」(文字でなくとも登場するものがそうしているのであれば可)の、描写を両方入れてください。
動詞としてお使いください。
例:「鳴く」「泣く」「泣いた」OK
「無く」「仕方なく」NG

(B)「雪」「そば」「走」「白」「黒」の内3つの文字をお使いください。(解釈自由)

文字数:
4000字以内(多少オーバーOK)


*****


Aのお題に挑戦しました。
R18っぽいシーンがあるので苦手な方はお気をつけください。字数は4千字弱です。
記事の続きからどうぞ。
*****



『旅のあとさき』



「綺麗な海って沖縄だけかと思ってた」
そう口に出すと、慎(しん)はようやく不恰好な笑顔を見せた。
「旅行、好きなくせに」
「ビーチリゾートには行かねえからなあ」
県道から少し入った海岸沿いの平屋建て。窓に面したカウンターに案内され並んで座る。
ぶち抜きのガラスからは、濃い淡い透き通った水がきらきら輝くのが見えた。
「どれにする? 晩飯もカニだけど昼から食べてもバチ当たんねえだろ。丼も美味そうだし、あ、カニ刺しなんて食ったことねえな。夜も出るかな」
沈黙は怖い。メニューを覗き込んでつらつら呟いた。
と、肩にコツン、と何か。
いや……慎の額がぶつかった。ズッと鼻をすする音がする。
「何で泣くんだよ」
びくっとする。慌てて身体を引いた。
「泣いてない」
「泣くほどカニ食べたかった? 良かったな」
ごまかすように湯呑みを引き寄せ一口啜る。
「泣いてないって。風邪引いたんだ」
「マジ?……こんな寒いとこ連れてきて悪かっ」
「うそ。ちがうよ」
慎の顔を見る。驚いたことに、本当に目尻が潤む。
「何でだよ。お前にちょっとでも笑ってほしくて連れてきたんだぞ。どうして泣くんだ」
「だって」
瞳が逸らされ、窓の外を見つめた。
「孝則(たかのり)と二人きりなのが、幸せすぎて」
間違えて心臓ごと飲み干したかと思った。


慎と孝則は高校のクラスメイトだった。馬が合い仲良くやっていたはずなのに、卒業した途端にあっさり繋がりは途絶えた。
孝則は、慎に対する後ろめたい気持ちのせいで、「たまには会わないか」のメールすら送れなかった。そうして半年過ぎ、一年が過ぎた頃には、途切れているのが当然になってしまった。
「どうして踏み出せなかったんだろう」と思う一方で、「拒絶されなかっただけましか」とも思う。
大学では何人か恋人らしい物もできたが、慎が薄まることはなかった。
友達フォルダのどれにも入れられないまま思いを募らせ、就職を間近に控えた春に、地元の駅でばったり見かけたのだ。

人並みをかき分けて近寄り、肩を叩く。振り返った慎は大きな目をさらに丸くした。
「孝則」
「久しぶり」
改札を出て向かいの壁際に立ち止まり、しばし話をした。
「ストレートで大学行ったんだよな?」
「うん。そっちも?」
「同じ。来月から社会人」
「俺もだ。院行かないから」
慎は製薬会社の営業職につくのだと言った。
「俺は県庁で……部署とかまだわかんねえけど」
「へえ。俺も技術職受けたよ。落ちたけどな」
慎は、えへへと笑った。その口元を咄嗟に、可愛い、と思ってしまって鼓動が早まる。
「受かってたら孝則と同じ職場だったのか。悪くないなあ」
残念そうに言われれば、心臓は跳ねる。勇気を出して尋ねてみた。
「四月になったらでも、飲み行かない?」
「うん、行きたい。最初は研修だから忙しくないはずなんだ。仕事どんなだか聞かせてよ」
すぐにスケジュールを確認し、孝則が店を予約することにして、手を振って別れた。


ひと月前のことだ。
お疲れ、と合わせたグラスが、慎の口に付けられることなくカタリと置かれた。「どうした」
「なんでもないよ」
「そっか」
孝則は何気ない風を装って、お通しに手を伸ばした。
あの日以来、月ごとに慎と飲みに行くようになって半年ちょっと。その間一度も、こんなに彼が暗かったことはなかった。
距離を詰めたい、とはもちろん思った。
しかし、最初の回でさっそく「恋人がいる」と聞かされ、その道は行き止まりだと知った。
なのに、つい気になって聞いてしまうのだ。
「彼女と何かあった?」
「……別れた」
望みを言い当てられたかのように、どきりとした。

「……そっか」
一瞬気持ちは高揚したが、思い詰めたような表情に、しゅんと冷静になる。
「やっぱり、何かあったんじゃねえか」
「大したことじゃないだろ」
「じゃあ何で暗い顔してるんだよ」
そんな表情じゃなくて、いつもの笑顔が見たいと思った。
だから、孝則は決めた。
「よし。来月は北陸にしよう」
「え?」
「慎、冬になったらカニ食いたいっつってただろ。どうせなら本場行こうぜ。週末一泊なら、仕事も平気だろ」
「まあ……」
あっけに取られた慎が、嫌そうには見えなかったから良しとする。
「いつなら空いてる? 夜行バスで行って、帰りは疲れるから新幹線な。せっかくだし温泉旅館にしよう。計画は立てとく。慎は当日来てくれればそれでいい」
次第に頭の中でルートが組み上がっていく。
……少し時間を置いて、慎は顔を緩ませ苦笑した。
「孝則、行動力ありすぎ」
ありがとう、との言葉も添えて。


海の色も昼飯の味も覚えていない。
ブレーキの効きすぎるレンタカーを操りながら、慎が話すのを聞いていた。
「言われたんだ。『就職してからずっと上の空。最初は仕事が大変なんだと思ったけどそうじゃない。あなたは他の誰かを見てる』って。浮気なんてしてないから心底驚いて否定した。でも『あの同級生さんと話してる方がよっぽど楽しそうじゃない』って言われちゃってさ」
「……おれの事?」
混みもしない道路をナビの誘導通りに進む。大変な作業でもないのに、言葉が浮つく。
「俺、無意識で孝則の話ばっかしてたみたい。だって嬉しかったんだ。あんな偶然みたいに再会して……また会えるようになって」
「……おれも」
シフトレバーを掴む手に慎の右手が添えられた。ひやりとした指が絡むと、スイッチが入ったように胸がぎゅっと痛くなる。
「こういうのも『好き』って言うのかな」
途中、あらかじめ調べておいた景色の綺麗な公園に立ち寄った。
何もできずにコートの襟をかき抱く。紅葉の色も形も視界を通り抜け、慎の姿ばかりが妙に鮮やかだった。



予約をしたから、旅館に泊まらねばならない。温泉宿だから、温泉に入らねばならない。
別々なのは不自然すぎるから、一緒に行かなければいけない。
慎のむき出しの背を湯けむりにぼやけさせながら、目が悪くてこんなにほっとしたことはない、と孝則は思った。まともに見えてしまったら、自分がどうなってしまうか分からない。
相変わらず、いい値段のはずのカニの味も全くわからなかった。部屋に戻れば、正真正銘の二人きりだ。
「孝則」
いつの間にぴったりくっついた布団にくてんと転がり、慎が手招きしてくる。浴衣という衣服を発明したのはどこのどいつだろう。扇情的すぎて恨めしささえ覚える。
据え膳以外の何物でもなかった。ぱりっとした掛け布団の上から、孝則も腰を下ろす。
風呂か、酒か。ぬるくほてった慎の頬にそっとふれた。
それが、スイッチだった。

初めて触れた唇は、なぜか塩の味がした。「慎」
「ん」
「しょっぱい」
知らない、という声がくぐもる。むさぼるように舌まで食んだ。
自分の手の中に間違いなくあることを確かめたくて、頭から背中まで撫で回す。背骨をなぞるとくすぐったそうに身がよじれる。
慎の中心が、孝則の脚に触れた。
「……熱い」
「孝則が冷えてんだろ」
「んなわけな、」
直に感じた思い人の衝動に、孝則も反応を始める。
「だな。ここは熱い」
いきなり掴まれたのでびっくりしてしまった。心臓は縮んだのに、反動した血流で質量がぐっと増す。
初めてじゃないのに、手順が分からなくなった。

少なくとも触られたからいいだろう、と孝則も掴み返す。布越しの熱はもどかしく遠い。
利き手を拙く動かすと、たちまち慎の息が上がった。
「……ん、」
信じられない、と思う。慎とこんなことをしているのはもちろん、一時はあんなに離れていたのも、かつては学友同士だったというのすら。
「はぁ……っあ」
でもやはり、焦がれた存在がこんなにすぐ近くにあるのが、一番夢みたいに信じられない。
高ぶりを押し付けながら抱きしめ、抱き合いながら馬鹿みたいに擦り付けあう。
「ん、慎……っ」
「……な、に」
浴衣ははだけて、下手な蝶々結びもあえなくほどける。
固い胸板を不格好に合わすと「好きだ」という心の存在感に目眩がした。
「ん……っん、あぁ」
はち切れそうな血流が突き上げてくる。
慎の下着をずり下ろして手をあてがった。とたん、その掌で達したいとでもいうかのように、激しく上下に慎が動く。
「ダメ……っいきそ」
「じぶんで、」
動いてるくせに。言いたかった唇は、噛み付くようなキスと無遠慮に忍び込んだ手に阻まれた。
我慢できるわけがない。孝則も不器用ながら腰を動かす。
「あ、も……だめ」
「ん……!」
頭の芯が痺れるような倒錯感。
多分、同時くらいに、吐き出した。


億劫な腰を持ち上げる。部屋の隅のティッシュを手繰り寄せると、慎は、カバンからポリ袋を引きずり出していた。
「何それ」
見慣れた箱と、見慣れはしないボトルにどきりとする。
「見たらわかるだろ」
「分かる……けど、何で」
お前はそんなに、用意周到なんだ。

「だってさ。二人で旅行行こうなんて言われたら、普通誘われたと思うだろ?」
「……そうなのか?」
そうかもしれないけど、いやそんなつもりは全くなかったのだけれど、でも結局はこうなってるんだからそれは全く間違ってなくて? あれ?
……というか。
混乱を押しのけるように別の疑問がむくりと沸いた。
「てかさ。おれとお前」
「うん」
「どっちが、上とか下とかって……」
「え?」
全然考えてなかった、と呟いた慎は唐突に耳まで赤くした。羞じらうタイミングが変だろう。掴めない。
「だって、孝則とくっつきたい、までしか考えてなくて」
そんな純情なことを言われれば、孝則まで恥ずかしくなってしまう。
「買うならそんくらい考えろよ……おれは知らねえぞ。慎が決めろ。お前に笑ってほしくて連れてきたんだ。乱暴だとか泣かれたら嫌だからな」
「んなことで泣くかよ」
「じゃあ何で」
……もう、泣いてるんだよ。

聞こうとした唇は、噛み付くキスにやっぱり塞がれてしまった。
「まだ分かんないの?」
「……ああ」
分かる気がするけれど、そんな言葉は言えやしない。
「きっと泣くほど好きなんだ」

倒れこんだ布団は、さっきの熱を宿したままだ。
初めての夜は、長くて深い。




*****

R18とか言いながら朝チュンよりひどい寸止めですみません。
純情ぶるのも恥ずかしいんですが、直接的な単語を打つのが恥ずかしすぎるんですけどどうしましょう。ていうか、そういう単語を置くと、浮く。
しばし勉強したいと思います。
| [SS][BL] | 19:49 | comments(6) | - |  拍手! | にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ
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拝読しました。
再会ものの醍醐味が散りばめられていますね!
二人の一つ一つの仕草が、互いの恋心を表しているように思えます。
どっちが上なんだ? と気になって読み返してみました(笑)。
最初は慎くんの方が受けかな、と思っていたのですが、最終決定権を委ねる孝則くんの方が実は男前受けだったりして……と分からなくなりっ。
孝則くんの方が平仮名の「おれ」が多いことから推理して、慎くん×孝則くん? と勝手に予想しましたw
勘違いだったらすみません!
普段、でかくて男前の攻め×ちっちゃくて可愛い受け、ばかりが基本の自分にとっては、こういう対等な関係性は新鮮で魅力的に映ります♪
二人は赤い糸で結ばれているんだな、と心温まる素敵なお話でした!
| 牛野若丸 | 2014/12/03 11:35 AM |

牛野若丸さま

お読みいただきありがとうございます。二度楽しんでいただけたでしょうか?笑 恐縮です……!
ショートストーリーは限られた字数の中で二人の「好き」に説得力を持たせるのがおもしろ難しく、いつも試行錯誤です。

どちらが上でしょうかね。
高校時代の二人は、慎は陸上部で短距離走のエースでしたが足を痛めて吹奏楽部に転向、一方の孝則は中学では同じく短距離で活躍してたのですが早々に見切りをつけ、高校はそれでも運動部に所属しています。
二人は一度だけ、学校行事のリレーでバトンを繋いだことがあるんですよ。そこで孝則的には、おそらく慎もどこかでビビッときたとそういう裏設定、……嘘です、いま即興で考えました。笑
ともかく、そこらへんを書きこむと、攻めとか受けとか決められそうな気がしますがまだ未定ということでした。牛野さまの見解も勉強になります!
| 可賀 | 2014/12/03 9:37 PM |

はじめまして。
ピンクでぶ猫と申します。
まったくの部外者ですが、今回初めて、お題SSに参加させていただきました。

BLのSSって、普段あまり読む機会がないのですが、一瞬の風景を切り取れる、というのは、究極の萌えを表現できる形かもしれないと感じました。
この『旅のあとさき』も、そうですが、小説の中の、肝心な部分だけをぎゅっと凝縮してあるんですね。

私は技術的なこととかはよく分からないのですが、

>予約をしたから、旅館に泊まらねばならない。温泉宿だから、温泉に入らねばならない。
別々なのは不自然すぎるから、一緒に行かなければいけない。<

こういった文章を読むと、二人の初々しさが伝わってきて、思わずほっこりと笑ってしまいました。
恋が成就する瞬間というのは、恋愛小説の一番のヤマ場でもありますが、そのヤマ場だけを取り出して読める、という経験は至福です。

どっちが上なのか下なのか…リアルな現場でもありそうな戸惑いが、可愛らしい。
寸止めも、余韻があっていいですね。
(何でも見せりゃいいってもんじゃありません:笑)
次は自分も、こんな初々しい恋愛話を書いてみたいな、と思いました。

感想を書くのは昔から大の苦手なため、要領を得ない文で申し訳ないです。
きっと、作者が恥ずかしがりながら書いてるがゆえの「初々しさ」なんでしょうね。
しあわせな気分になれました。ありがとうございます。
| ピンクでぶ猫 | 2014/12/05 2:44 PM |

ピンクでぶ猫さま

はじめまして!
お読みいただき、丁寧な感想をくださり、ありがとうございます。

BLのSS、私はもともと二次創作からBLに入ったので、だいぶ読み慣れて?いました。
けっこう、「この二人のこういうとこが見たい!」という端的なSSを書かれる方が多いんですよね。自分もそうでした。
でもオリジナルとなると、それこそ「合コンで初対面のやつの自己紹介聞いて何が楽しいんだ」じゃないですけど、説得力があるのかないのか自分で読んでもよくわからず……という感じで。
「恋愛の醍醐味だけ味わえる贅沢」という表現に、おお、そういう捉え方もありか!と思いました。

初々しすぎる二人(と作者……)でしたが、楽しんでいただけたのでしたら幸いです。お言葉一つ一つ嬉しかったです。初心忘るべからずで頑張ります。
お題SS参加されてるとのことで、作品、これから読みにうかがいます!
どうも、ありがとうございました。
| 可賀 | 2014/12/05 10:52 PM |

こんにちは、可賀さま。
拝読いたしました。
お題SS、難産中の砂凪です。

再会したときの会話が好きです。
なんかこう、すごく自然な感じで。
(いや、内心全然自然じゃなかったにしろ…)
上記ピンク猫さんがおっしゃっている、『予約をしたから〜…』のギックシャックした印象とは正反対で。
このギックシャックぶりもいいですね…。
思わず笑っちゃいました。

題名も素敵だなぁ。
やわらかでしずかな感じがします。
わたし、タイトル付けがすごく下手なんですね。
だから粋(…粋?でいいのか?)な題名を見るとわぁー!って。

そうそう、恋ってこういうものだよね!と思わせてくれるSS、ありがとうございました!
| 砂凪 | 2014/12/10 11:23 AM |

砂凪さま


こんばんは。SS制作中とのことで、完成楽しみにしてます!
難産で生まれたらより可愛いかもしれません。

感想ありがとうございます。
「一周回って冷静だったのがどこかでタガが吹っ飛ぶ」というのが書きたかったのかな?と今頃思いました。
興奮のあまりスムーズすぎちゃう会話とか、ロボットみたいに無理やりつなげる思考回路とか。
どこか不自然だったから、キスとか触れた体温一つとかで、ネジが飛んじゃう。そうしてみると、飛んだ状態の方が何だか自然みたいだ、って。
そう考えてみると、表現、構成工夫の余地がもっとありそうです。

題名ほめられたの初めてで嬉しいです!笑
私もタイトル付けは苦手です。今回は『泣くほど好きな君だから』という薄っぺらい三文BLみたいなのとの二択でした。(今まさか実在しないよなとググったらソナポケの嵐で意識が遠のいた)

お返事なのに語ってすみません……!素敵なお言葉をどうもありがとうございました。
| 可賀 | 2014/12/10 11:28 PM |










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