ラレトラ

可賀レトラの日記と小説置き場
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SS『身分違いの恋』
2月のお題SSのつもりです。

*****

2015年2月お題SSズ募集詳細

主催幹事:
牛野若丸さま

お題発案者:
牛野若丸さま

お題:
「氷」「咳」「バレンタイン」(3つの中からいくつ選んでもOK)

文字数:
4000字以内

*****


お題からは「氷」を使用。
1100字くらい、名前は出ません。

短いですが、続きからどうぞ。



*****




『身分違いの恋』




 君が美味しそうに氷をがりがりかじるのをよく眺めていた。
「氷食症?」
「なにそれ?」
 君に会わなければ薄っぺらいハンバーガーなんて一生食べることはなかったかもしれない。味のしない肉片、薬品臭のするピクルス、そして舌にこびりつくチーズ。しなびたポテトをコーラで流し込むのがどれだけ贅沢なことかを知った。
「氷ばっか食べてるビョーキ。鉄欠乏症とか脅迫性障害とか諸説あるみたいだけど……お前、いたって健康そうだけどな」
「そっかあ、病気なのか。どうりで止まらないと思ってた」
 納得したように呟く君の口からは、相変わらずカリカリと小気味よい音がする。ハンバーガーに負けず劣らず氷の質だって貧相なものだ。しゅわっと奥歯で崩れたり、そのくせ後味も消毒液臭くてとても味わえたものじゃない。
 それを知っているということは、自分でも食べてみたということだ。初めてかじった氷は罪悪感の味がした。
『行儀悪いからやめなさい!』
 キリキリと喚く母の声が聞こえる。
『歯が折れて病気になるわよ!』
 ……記憶の中で。
「氷、止まんなくなんない?」
「ならない。不味い」
 炭酸の刺激の薄れた甘い味が喉をじわりと濡らす。
「そっか」
 君はなぜか嬉しそうに笑った。「でもマズイって言いながらいっつも全部食べてる。ハンバーガーもポテトも、おまけに今日は氷まで」
 君の前にはいつのまにかペーパーでできたゴミの山。そのうち一つを取ってみれば、それは器用に鳥の形をしていた。
「すごい」
「鶴だよ? ただの」
 君は心底不思議そうに言う。
「俺には作れない。だからすごい」
 君は何も言わずに手を動かし始めた。ひからびたポテトを食べ尽くす頃には、器用な鳥がサイズを変えて五つもできた。一つは小指の先ほどの大きさしかない。
 すごい、は通り越して、途方にくれる。
「なんでまた、そんな……」
「止まらなくなっちゃうんだよなあ」
 さっきと同じことを君は言った。
 鳥は隊列を組む、君の方角を向いて。小指の一羽を先頭に、おもちゃの兵隊のように美しい斜方形を描く。プラスチックのコップから滴り落ちた水面を泳ぐ。
「終電何時?」
「何時でも」
「うちくる?」
「……構わないなら」
 君にそう言われるのを待っていた。不味いと言いながらハンバーガーを食べに行くのもそうして全部食べ尽くすのも小指の先ほどしかない紙屑をポケットにねじこもうとしているのも、それが全部「君」だからだ。
「それ飲んでもいい?」
「もう残ってないけど」
「んーん、氷。ちょっとだけある」
 返事も待たずに君はそれを口へ運ぶ。カリカリと小気味よい音がする。
 君が美味しそうに氷をかじるのを、僕は飽きもせず呆れもせずによく眺めていた。
 そんな恋だった。




*****

今でもたまに薄っぺらいハンバーガーとポテトをコーラで流し込みたくなります。
渋谷の雑踏で終わらない夜を眺めてた大学時代の味がします。
| [SS][BL] | 22:37 | comments(2) | - |  拍手! | にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ
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拝読しました〜。
短いSSだったので5回ほど読ませて頂きましたっ!
「君」に片想いしている「僕」のお話かな?
それとも、二人は付き合っていたのでしょうか?
しかしどちらにしても、その「恋」はどうも終わってしまったような匂いがしますね。
母の喚き声の記憶が一瞬だけ出て来ますが、「君」じゃなくて「僕」の記憶だとすると、何なのか気になります!
1100字とのことですが拡がりのあるSSですね。
行間を込めるというのは素敵だと思いました♪
| 牛野若丸 | 2015/03/01 6:48 PM |

牛野若丸さま


つたない話に感想くださりどうもありがとうございます。
行間とおっしゃってはいただけましたが、どうにも言葉足らずだらけのような……!がんばります。

僕は、育ちはいいけどヒステリーな母がいる、というイメージでした。ファストフードなんて添加物が身体に悪い。食事中にペーパーで遊ぶなんてもってのほか。みたいな。
別に、階級の違いがあるわけじゃないけど、庶民的なものに君に出会って初めて触れた、というような。
このあと君の家に行ったらもっと色々あるんだと思います。恋はするけど、一緒に居続けるのはきっと難しかったと思います。おっしゃるとおり、終わった恋の話でした。

毎月ありがとうございます。
今後もどうぞよろしくお願いします。
| 可賀 | 2015/03/06 10:49 PM |










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