ラレトラ

可賀レトラの日記と小説置き場
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二条と蓮さん1『破裂するまで息を吸う』
二条
 高校生。芸人志望。
 よく河原で練習している。

蓮さん
 大人。スロッター。
 川沿いの高層マンションの眺めのいい部屋に住んでいる。


拍手のお礼メッセージにて不定期連載中。
本文は追記から。


*****



 目の前を影が覆って、意識が遠のいた。なんだ、二条か、と目が合って気づくまでに数秒を要した。つまり、俺が仰向けでその上に二条が覆いかぶさって、その不自然すぎる体勢が少なくとも数秒は続いたことになる。
 狭い部屋の中で、俺が急に立ち止まったもんだから「うわあっ」と二条がつまづいて、その勢いで間違えてベッドに倒れこんでしまった、それだけのことだ。
 それだけだった、はずなのだけれど。
「……あの」
 我に返ると、俺の手首は二条の両手でがっちりベッドにくくりつけられていた。
「抵抗とか……しないんですか?」
 どこからどう見ても、のこの形勢。ああ、間違いなんかじゃないんだ、これは故意だわざとだ計画的犯罪だ、と思い知る。
 ひょっとしたら、俺すらも、込みの。
「まあ……しても別にいいんだけど、」
 驚くほど底の見えない眼鏡の向こう側を、俺はまっすぐ見返してやった。重み掛かった脚がどくどくと脈打って、なぜだかとても熱い。蓮さんが何考えてるのか分かりません、ってこいつはしょっちゅうこぼしてくるけれど、俺に言わせれば、二条の方がよっぽど何を考えているのかわからない。高校生のガキのくせして、なんて悪態を、ぐちゃぐちゃと丸めて飲み下す。
「お前こそ、初めてが男でいいの?」
 ……しかもこんな最底辺にも届かないような、人間のクズで。
 と、そっと心の中で付け加える。

「へ?」
 二条はきょとんとして、それから、かっと顔を赤くした。
「……どっ、童貞じゃないですよ!」
「あ、そーなの?」
 今度は俺の方がきょとんとしてしまう。え、こいつって、そういう奴なの?
「わりぃ、てっきり、」
 口先だけで謝ってはみるが、二条は何だか恥ずかしそうな顔をして、その表情をこちらからそむけようとするだけだ。その姿を目で追っていたら、何とも言い表せない気持ちが沸き上がる。直前の否定の言葉が、何度も脳内で再生される。
 繰り返されるうちに、前触れもなく、俺はどうしたら良いのか全くわからなくなってしまった。
「……悪い」
「へ?」
「煙草吸ってくるわ」
「あ……」

 二条の腕をくぐり抜け、いろんなガラクタを押しのけてベランダに出た。もたれかかって握りつぶすように箱をひっつかみ、一本取り出して火を付ける。鈍い色の夕暮れに染まる街並みを見ていると、落ち着くどころか、余計に苛立ちがつのった。煙のニオイがつんと鼻をこする。秋風が涼しく、シャツを捲った腕を冷やしてはすぐに流れて消えていく。
 ……なんなんだよ、あいつ。
「蓮さん……?」
 心配そうな声がカーテンをくぐって俺のところまで届いた。
 なるようになれだなんて、押し倒された最初はそう思った。そんな気持ちはどこへやら、さっきは無性にいらいらしたのだ。それでもこうして声を聞くと、すっと気持ちがおさまっていくのを感じる。一体どういうことだろう。
「ねえ、蓮さん、怒りました?」
「別に怒ってねえよ」
 ぞんざいに答えたつもりが気にもならないのか、すぐに気配が近寄った。
「じゃ、怒ってないなら」
 ふっと、背中に重さがのしかかる。
 ……抱きしめられている、と気づくまでに、また、数秒かかった。

 色数の減った街並みが広がる。空だけが赤くて、雲は、少ない。許した覚えはないのに、背中ばかりが妙に温かい。
「蓮さんってたぶん、」
 二条が、呟く。
 ……来るものは拒まずだけど、たぶん簡単に逃げちゃう人なんですよね。
 そんなことを静かに言われたので、俺は、お前がそんなことしてる間はいつまでたっても逃げらんねえよ、と小さな声で悪態をついた。




| [SS][BL]二条と蓮さん | 12:36 | comments(0) | - |  拍手! | にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ
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