ラレトラ

可賀レトラの日記と小説置き場
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二条と蓮さん2『しかくさんかく、そしてまる。』
二条
 高校生。芸人志望。
 よく河原で練習している。

蓮さん
 大人。スロッター。
 川沿いの高層マンションの眺めのいい部屋に住んでいる。


拍手のお礼メッセージにて不定期連載中。
本文は追記から。


*****



 蓮さんは不思議だ。とんがっているのに、まるい。
 いつものように河川敷で大きな声を出しながら稽古をしていると、ふと視界の隅に腰掛けそのまま動かない人影があるのに気づいた。
「蓮さん」
「ん」
 逃げられないように、と慌てて駆け寄ったのだが、蓮さんは何本目だかの煙草に火をつけたばかりだった。
 たなびく灰色の煙は、川面を抜け、対岸のぼうぼう草を抜け、ビル群を抜けて色味の少なくなった空へと吸い込まれていく。
「……練習、サボるなよ」
「今日は昼からやってたから、もう終わりでいいんです」
「そうなの?」
 そういうと蓮さんは立ち上がる。尻についた泥をはらい、大きく伸びをするものだから、少し短いTシャツの裾が持ち上げられて白い肌が見えた。
 扇情的なラインが自分の分厚い眼鏡に歪められて、少しだけとろけた。
「行くぞ。どうせうち来んだろ、勝ったから奢ってやる」
「はい」

 奢ってやる、といったわりには、蓮さんの財布には千円札一枚しか入っていなかった。
「……どこが『勝った』んですか」
「ちゃんと八万勝ったんだよ。先月分、いや先々月分か? 家賃払っちまったからねえけど」
「お願いだから、家追い出されないでくださいね」
「俺なんてのたれ死ぬくらいがちょうどいいんだよ」
 またよく分からないこと言う、と文句をつけると、蓮さんは肩をすくめ、コンビニで唐揚げ棒とアイスを買ってくれた。
「やる」
「蓮さんは?」
「腹減ってねえ」
「また……」
 蓮さんは食べることに興味がない。「最低限のエネルギーが補給できればそれでいい」と以前言っていた。理想は、サプリメントとか宇宙食とか、そんな感じらしい。
「ていうか唐揚げ棒とアイスってどっちから食べたらいいか難しすぎるんですが」
 文句をつけるふりして、まだしも栄養のありそうな唐揚げのほうを押し付けた。
「そんならチーズスティックの方がいい」
 蓮さんはわがままだ。冷えた黄色いパッケージはあっさり奪い取られてしまう。ハムスターとか齧歯類みたいなしぐさで、のんびり歩きながら一口二口かじる。
「やっぱいい。飽きた」
 当然のように、押し付け返されてしまった。

 俺は蓮さんの職業を知らない。名字を知らない。年齢を知らない。
 なぜ、景色の良いマンションの高層階にひとりで住んでいるのか、どうやって生計を立てているのか、なぜ、俺みたいな高校生のただのガキを部屋に招き入れてくれるのか、知らない。
「蓮さん。スロットって面白いんですか?」
「面白い面白くないじゃねえよ」
「今度連れてってくださいよ」
「ガキじゃなくなったらな」
 ビール、というので、ものの少ない冷蔵庫から一本出してきてやった。座卓もクッションもじゅうたんもない部屋の地べたに二人で座る。ごみやがらくたが所狭しと脇に積み上がっている。蛍光灯の白い光は眩しくて、ほのかに暗い。
 蓮さんは、半分も飲まないうちにビールにも飽きる。
「もういい。やる」
「ガキに飲ませていいんですか?」
「知るか」
 寄りかかったベッドにぐでんと身をあずけるさまは、とことん無防備だ。きつい炭酸を飲み下した喉で、俺は思わず声に出す。
「お腹すいたな……」
「さっきやっただろ」
「いや、食欲は満足してます」
「じゃ」
「性欲、とか」
 長い睫毛ごと、さっと目をそらされた。

「からかってんじゃねえよ……二条のくせに……そんな度胸ないくせに」
 狭い室内。
 鼓動の聞こえそうな距離。
「蓮さん」
 床に放り出された手に、自分の手のひらを重ねる。驚くほどつめたい。もう片方の腕は、目隠しするように顔の上に置かれている。
「汗かいちゃった。シャワー借りてもいいですか?」
「かってにしろよ」
 勝手にしますね、と言いながら風呂場に向かう。後ろから、「ガスとめられてたから水風呂かもしれねえぞ。風邪ひくなよ」と蓮さんの声がちいさく聞こえた。
 蓮さんは不思議だ。
 とんがっているのに、どこかまるい。




| [SS][BL]二条と蓮さん | 12:37 | comments(0) | - |  拍手! | にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ
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