ラレトラ

可賀レトラの日記と小説置き場
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SS『バレンタインデイ・キッス』
せっかくだからたまには季節ネタで。
バレンタインの話をかくのは初めてかもしれない。

*****

2016年2月お題SSズ募集詳細

主催幹事:
牛野若丸さま

お題発案者:
牛野若丸さま

お題:
「犬」「甘い」「とける」
(全て解釈自由、3つの中からいくつ選んでもOK)

文字数:
4000字以内

*****

お題は3つとも使いましたー。

・槙志(まきし)……高校三年生。
・多紀(たき)……大学四年生。槙志の通ってた塾の講師。

記事の続きからどうぞ。


*****



『バレンタインデイ・キッス』



「月曜あそびに行っていい?」と聞いたら「いいよ」と答えてもらったので、図書室で自習している間中、待ちきれなくてしょうがなかった。受験真っ只中の高校三年生は、もう授業なんてないのだ。すでに合格組の俺ももちろん。
 約束した夕方までなんとか粘って、ドキドキしながら玄関チャイムを押した。
「開いてる。入って」
「お邪魔しまーす」
 入った瞬間立ち姿が見える。やばい、私服だよ私服。センセイやってるときはいつもスーツだったから、私服は見たことないわけじゃないけど、やっぱ新鮮。
 で、初めて入る家の中なんてもう気になってしょうがない。いわゆるワンルームっていうのか? の間取り。収納も生活スペースもお互いが侵食しあっている見慣れない風景。めちゃくちゃキョロキョロ見回したかったけど、子供っぽすぎるような気がしてガマン。
「座れば?」
「う、うん」
 多紀(たき)先生がローテーブルの横に座ったので、俺も向かいに腰を下ろす。すぐ隣には無造作に畳まれた布団……やばい、生身な感じがやばい。先生の無機質っぽいところに俺は惹かれたような気がしていたけど、この家の生活感はギャップがヤバイ。
 布団のことは頭から締め出さないと良からぬ思考に走りそうだったので、別のものを探した。先生の横に置いてあるものが気になった。
「何その紙袋」
「ああ、見りゃわかる。食べる?」
 床を滑ってきた袋を覗いた。色とりどりのビニール袋から漂ってくる、甘い甘ーい匂い。
「うっわ。この数。センセーさすがだねえ」
「槙志(まきし)も似たようなものだろ」
 ちょっとむっとしたように多紀先生は言った。まじで? ジェラシー?……なわけないよな。そんなにこの人は甘くない。
「今年は妹ぐらいだよ、みんな受験でそれどころじゃねえって」
「受験が無かったらもらって当然だ、と」
 そう言うと先生はくすりと笑った。……俺は感動した。
 高校に入ったとき、レベルの高さにとたんに授業についていけなくなった。そうして放り込まれた個別指導塾で出会ってから、二年半。
 どうにかしてニヤリとでも笑った顔が見たくて、俺は塾に行くたびあれやこれやの手を駆使したのだ。テレビで見た笑えるギャグを披露したり、ネットで仕入れた悶絶ものの爆笑話を聞かせたり。
 しかし「そんな暇があったら勉強しろ、ガキか」とすげなく言われてしまったので、もしかしたらいい成績取ったら笑ってくれるかな? とようやく本業にも精を出した。そちらは一朝一夕とはいかず、半年くらいコツコツ頑張ったところでようやく全国模試の塾内トップの成績をあげられた。指導室で向かい合うと、先生は言った。
「なんだ槙志、おまえ犬みたいだな」
「は?」
「早く褒美よこせ、って顔しやがって。……よく頑張った、おめでとう」
 その時初めて多紀先生の笑った顔を見たのだ。一瞬で落ちたよ。
 そうまでして欲しかったものが、こんなに何気ない会話ひとつで手に入る。付き合うってスゴイ。というかいまだに半分しか信じられてない。……俺と先生、付き合ってるんだ。
「どれでも食べていいの?」
 何気ない風を装いながら、袋の中を軽く漁る。
「あ、どれでもはダメだ。もしかしたら危険なヤツもあるから」
「なに、危険って」
「たしかピンクの袋にシルバーのリボンのあっただろ。それなら大丈夫」
「どういうこと」
 確かにそんなラッピングのものが見つかった。
「親が製菓の先生だから、危険な成分は入ってないはず」
「なるほどねー」
 むしろそれなら食べてみたい。妹の半分焦げかけたブラウニーより旨そうだ。
「こっちは? これは食べちゃダメ?」
 別の袋も取り出した。……ちょっと緊張しながら。
「それは駄目」
「なんで?」
 心臓がズクンと鳴る。
「それは俺が食べるって決めてるから」
 多紀先生は真顔で言った。
「さっき食っていいって言ってたじゃん」
「でも駄目なの」
「なんで? 誰からもらったの?」
 俺は聞かずにいられなかった。
「……それをおまえが、聞くか?」
 先生の、全部見透かすような目。……俺は一つの可能性に思い至る。
「あー! 前川さんバラしたな! 先生には黙っててって言ったのに!」

 前川さんは、大学四年生の多紀先生が講師をしている、そして俺が通っていた塾の受付の人だ。明るく頼りになるおばちゃんで、俺と先生のてんやわんやもずっと見守ってくれていた(今付き合っているのはさすがに内緒だが)。
 で、俺はバレンタインのチョコレートを前川さんに託した。
 毎年先生が山ほどもらうのは知っていたから、その女の子たちが羨ましくて、せめて自分があげたものも食べてもらいたいと思ったからだった。けれど男の自分が直接チョコレートを贈るなんて気恥ずかしいことはまっぴらごめんで、折衷案だ。後から先生が全部食べきったのを確認して、一人にんまりしようと思っただけだったのに。
 しかし先生は鼻で息をした。
「俺まだ何も言ってないだろ、自分でばらしてどうすんだ」
「……あ」
 気づいてなかった。
「つーかやっぱり槙志だったんだな。ちなみに前川さんには聞いてないからな」
「じゃあなんでわかったの……」
 受付の人にチョコを預けるなんて、ちょっと内気な女子なら誰だってやりそうなことなのに。
「ラッピングが、サチと一緒」
「あ」
 再度、気づいてなかった。サチは俺の妹だ。たしかに俺は、妹の戦果の余り物をこっそり一枚パクったのだ。俺の成績が上がったことに気をよくして、親は二つ年下の妹も同じ塾に入れていたのだ。
 こんな感じでばれるだなんて、直接渡すより恥ずかしかったかもしれない……
 けれど、先生はすごく優しい目をした。
「ありがとな、嬉しいよ」
 そして俺の視界はぎゅっと大きくなった多紀先生の顔に遮られる。
 さらに一瞬、唇をかすめたもの。
 え、えっ……!!??
「うそっ! 多紀せんせ! いまの!」
「何でもない」
 先生はフンとそっぽを向く。
「だって、俺卒業するまでそういうのダメって言ってたのに!」
「ホワイトデーのお返しだ」
「どっちにしろフライングすぎじゃん!」
 あまりにびっくりして言い返してしまうと、とたんにムッとされた。
「じゃあ、いらなかったのか?」
「うそうそ違う、そういうことじゃなくて……突然だったから、味わえなかったの悔しくて」
 本当に。だって、先生とファーストキスだよ? 一瞬すぎ! 瞬間すぎ! あと五十秒くらいは堪能したかった……
 俺のあまりに残念そうな声を聞いてか、先生はまた小さくだけど笑ってくれる。俺はそれを見ると、悔しかったのも忘れて「付き合うってスゴイ」というさっきと同じバカみたいな思考に戻る。
 先生は言った。
「ていうか、槙志いつまでもそれ掴んでるなよ」
 俺は自分で贈った包みを握りしめたままだった。
「なんで?」
「とけるから。お前の手、熱いだろ。ちゃんと旨いまま食わせろよ」

 そうか。そんなことは、もう知られてたんだっけ。
 お預けをくらわされているようで、俺たちはちゃんといろんなものを渡している、もらっているみたいだ。
 その、普段はあまり見えないものがかたちになって幸せを運ぶなら、一年に一度くらいバレンタインデイなんてのもなかなか悪くないのかもしれない。
 そんなことを思っている俺の横で、甘すぎる、と文句を言いながら、先生はチョコレートを頬張っている。




*****

わたし、たぶん、年下攻めが好きなんだと思う。
 
| [SS][BL] | 23:45 | comments(4) | - |  拍手! | にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説家志望へ
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うふふ、私も年下ワンコ攻め大好物ですよん。
| レイ | 2016/02/15 11:52 PM |

レイさま

ワンコ攻めはバリエーションが多いところも好みです〜!
小型犬あり、番犬あり、忠犬あり。臆病者とか、主人以外になつかない系もいいですね。
| 可賀 | 2016/02/16 11:28 AM |

あまーーい!!!(古い)

レトラさんがこんなストレートに甘いものを書かれるとは……いい意味で意外で、私もギャップ萌え^^クラクラしました。
お題がきれいに盛り込まれていて、おおって思いました。

牛野さんのブログで募集されているのを見た時、犬?と思ったわたしは完全にBL脳が遮断されていました。
こちらを拝読して、そうだ犬!ってなりました(笑)
かわいいお話をありがとうございました♪

年下攻め好き、ミートゥーです!

| そうかわりんこ | 2016/02/27 10:51 PM |

りんこさま

わーコメント全体的にうれしくてしょうがないです!(嬉しさのあまりざっくり)
甘ーいの本当は大好きなんです。コクのある甘さとか、ほろ苦い甘さとか目指して書いていきたいです。
いろんなワンちゃんで書けますのでりんこさんもぜひぜひ〜
そして、年下攻め好き同志として、今後ともよろしくお願いします(笑)
| 可賀 | 2016/02/29 7:59 PM |










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